半導体分野での湿式 シングルナノパーティクル計測について

ナノ粒径計測装置 LiquiScan SMPS / Spot Sampler

【特徴】
①微分型電気移動度法(DMA法)を用いた高粒径分解能計測
②シングルナノ粒径の計測に対応 (1.1 ~ 1000 nm)
③任意粒径パーティクルの抽出が可能

はじめに 微分型電気移動度法(DMA法)とは 

最小1.1 nmから計測可能
・1 nm~1 µmの粒径範囲に適用可能な粒径分布計測法。
・ナノ粒子の持つ「電気移動度(m2 V-1 s-1)」という物性から、粒子径に換算する評価手法。
・エアロゾル計測におけるナノ粒子計測法として、1970年代から使用されている。
・噴霧乾燥法と組合せて湿式計測に適用可能。計測対象はCMPスラリ、IPA、過酸化水素水、超純水など。
・ シングルナノ粒子計測法として、台湾など最先端の半導体ファウンドリでも洗浄液計測に活用されている。

【参考文献】
飯田氏ら(2017) エアロゾル学基礎講座-計測- 3.分級①:微分型移動度分析器
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jar/32/1/32_58/_article/-char/ja/

DMA(微分型電気移動度分級器)の原理

・①サンプル粒子(多分散)がサンプルフローとともにDMA内に導入される。
この時、サンプル粒子は中和器を通して平衡帯電状態である必要がある。(注)

・サンプル粒子は②シースエアーと合流し、DMA下流側へ移動する。
※サンプルフロー/シースフロー = 1 / 10 が基本設定。

・DMA内部の③高電圧ロッドには可変電圧が印加されている。
※負極印加が基本( -10~ -10,000 V)

・ 正の電荷を持ったサンプル粒子は中央にある負の高電圧ロッドに引き付けられながら 移動する。この時、電荷を持たない粒子はそのまま外壁に沿って移動し、④排気ポートから排出される。また負の電荷を持った粒子はロッド電圧からの反発力を受けながら移動し外壁に付着し捕集される。

・ 高電圧ロッドに印加された電圧に応じた移動度を持つ粒子のみが、ロッド下部にある⑤スリットに導入され、⑥単分散サンプル粒子出口から取り出される。③高電圧ロッドの印加電圧を変える事によって、スリットに導入される粒子の粒径を変える事ができる。

・印加電圧は、固定して使用することもできるが、高速で変化させCPCで計数させることで粒径分布計測器(SMPS)となる。
注) 粒径が同じでも、価数が異なると移動度は変わってしまう。つまり、同じ粒径の粒子でも、スリットに導入される粒子と、導入されない粒子がある。DMAは、+1価帯電粒子を対象とすることが基本設定となる。+1価帯電粒子の割合は、平衡荷電条件下では次項の通りであることが判っている。

DMA(微分型電気移動度分級器)の分級対象

←平衡帯電状態における粒径(電気移動度)別の価数毎の粒子割合

・既定の中和器(軟X線など)を用いることで平衡帯電状態に調整可能
・+1価(赤枠)が計測対象
・-1価設定も可能
・粒径分布計測(SMPS)用ソフトウェアにて
 +1価粒子の計測数を全体量へ算出して出力可能



【参考】
TSI社製静電分級器モデル3082オペレーションマニュアル(REVISION E)
p. B-8 より引用



特徴① 微分型電気移動度法(DMA法)を用いた高粒径分解能計測

LiquiScanでは試料中に含まれる多峰性パーティクルを個別に検出可能。 これにより、ロットごとの粒径のバラつきや凝集状態の変化など、詳細な粒径情報を確認可能。

DMA法は29 ~ 143 nmの粒径標準粒子(PSL粒子)の値付けに用いられている


LiquiScanによるナノパーティクル試料の計測フロー


特徴② シングルナノ計測に対応

最小1.1 nmの計測に対応。
最先端半導体製造プロセスに求められるシングルナノサイズ計測が可能。
1990年以降Sub10nmについて、2009年以降Sub 3nmについて多くの検証を経て実用化されている。

(以下、Sub 3nm文献の一部)
▪ Iida, K., Stolzenburg, M. R., and McMurry, P. H., (2009)
“Effect of Working Fluid on Sub-2 nm Particle Detection with a Laminar Flow Ultrafine Condensation Particle Counter,”
 Aerosol Science and Technology, 43(1): 81–96

▪ Jiang, J., Chen, M., Kuang, C., Attoui, M., and McMurry, P. H., (2011)
“Electrical Mobility Spectrometer Using a Diethylene Glycol Condensation Particle Counter for Measurement of Aerosol Size Distributions Down to 1 nm,”
Aerosol Science and Technology, 45(4): 510–521

▪ Jiang, J., Zhao, J., Chen, M., Eisele, F. L., Scheckman, J., Williams, B. J., Kuang, C., and McMurry, P. H., (2011)
“First Measurements of Neutral Atmospheric Cluster and 1–2 nm Particle Number Size Distributions During Nucleation Events,”
Aerosol Science and Technology, 45(4): ii–v

▪ Wimmer, D., Kreissl, F., Metzger, A., Kurten, A., Curtius, J., Kupc, A., Lehtipalo, K., Riccobono, F., and the CLOUD collaboration (2011)
“Performance of an ultrafine Diethylene Glycol (DEG) based Condensation Particle Counter.”
European Aerosol Conference, Manchester, Great Britain, Sept. 4 – 9, 2011.

▪ Wimmer, D., Lehtipalo, K., Franchin, A., Kangasluoma, J., Kreissl, F., Kurten, J., Petaja, T., Riccobono, F., Vanhanen, J., Kulmala, M., and Curtius, J.他 (2013)
“Performance of diethylene glycol based particle counters in the sub 3nm size range,”
Atmospheric Measurement Techniques Discussions, 6, 2151-21

ISOでも、シングルナノパーティクルの計測にDMA法が有効であるとの記載があり、国際的に認知されている。
ISO 15900 (2020):
Determination of particle size distribution
— Differential electrical mobility analysis for aerosol particles

以下、「1. Scope」より抜粋
‘‘This analytical method is applicable to particle size measurements ranging from approximately 1 nm to 1 μm. ’’

※ISO文中では、
 DMAを「DEMC:differential electrical mobility classifier」
 DMAを含む計測システムを「DMAS :differential mobility analysing system」 と記載している。

最小1.1 nmの計測に対応。
最先端半導体製造プロセスに求められるシングルナノサイズ計測が可能。

←検出器(1nmCPC)の検出下限値試験フロー

・NaCl結晶を加熱炉で蒸発・凝縮させ多分散ナノ粒子を発生し、さらにDMAで単分散化することで、粒径別検出効率試験を実施。

・参照機器にはエアロゾルエレクトロメーターを使用 ・電気移動度粒径として1.4nmが最小検出粒径であると実験的に導出

・上記電気移動度粒径1.4 nm は、幾何学径と以下の関係にあることが確認されている(参照1)
電気移動度径(de)=幾何学径(dm)+ガス分子の有効直径(Dg)  
1.4 nm= 1.1nm + 0.300 nm

 
 また、Dg=0.300nmは1.4~3 nm(幾何学径)範囲において、1%以内の 精度であることが確認された。(参照2)

(参照1)Ku, B. K., and de la Mora, J. F., 2009, “Relation between Electrical Mobility, Mass, and Size for Nanodrops 1–6.5 nm in Diameter in Air,” Aerosol Science and Technology, 43(3): 241–249
(参照2) Larriba, C., Hogan, C. J., Attoui, M., Borrajo, R., Garcia, J. F., and de la Mora, J. F., 2011, “The Mobility Volume Relationship below 3.0 nm Examined by Tandem Mobility–Mass Measurement,” Aerosol Science and Technology, 45(4): 453–467

特徴③ 任意粒径パーティクルの抽出が可能

1 nm単位で狙った粒径を抽出可能。抽出後に元素分析などで汚染原因を特定可能。


LiquiScan SMPS – Spot Samplerによるナノパーティクル試料の分級捕集フロー

計測例(CMPスラリ)の分級対象
分級式個数評価により、粒子径情報のみならず、単分散度の評価がより正確に行えます

CMPスラリーA
BET評価径12 nm相当
0.03 wt% 分散媒:酢酸アンモニウム20 mM

SEM測定値は平均16 nm(9-21 nm)になり、DMA方式の結果の方が一致
→SEM結果に近いブロードな分布を捉えている

CMPスラリーB
DLS評価径15 nm相当
0.04 wt% 分散媒:酢酸アンモニウム20 mM

SEM測定値は平均22 nm(19-27 nm)になり、DMA方式の結果の方が一致
→粒子それぞれをサイズ毎にカウントしている為、単分散性が高い様子も捉えている
※SEM測定値は名古屋大学日影達夫先生
「SiO2ナノ粒子分散樹脂等の SEM・TEM 及び SAXS による粒子径の観察 」より引用



適用可能装置



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