はじめに
マスクには様々な種類があり、その目的によって評価方法が異なります。
ISOなどの世界標準規格は無く、各国独自の規格が用いられて性能評価がおこなわれています。
日本では従来より労働安全衛生用の「防じんマスク」として、JIS規格及び国家検定が定められておりますが、一般的なマスクや医療用マスクには自主基準のみが用いられていました。
新型コロナウイルスの大流行以降は、多種多様なマスクが流通しておりその性能も様々です。このような背景から、マスクの性能評価の標準化を図る為に、日本においても新たに医療用及び一般用マスクのJIS規格が2021年6月に制定されました。(JIS T 9001 / JIS T 9002)
本資料では、JIS規格で求められているマスクの性能試験を行なう事が可能な装置や、その他規格に対応している装置、簡易的な評価に活用可能な装置を紹介します。
マスクの用途と規格の例
一般的に使用されているマスクには様々な種類があり、主には下記のように分かれています。
それぞれのマスクは目的が違っており、マスクの種類によって規格や評価方法が異なります。
【医療用マスク及び一般用マスク】・・・・・・JIS T 9001、ASTM F2100、ASTM F2101など
(サージカルマスクなど)
【感染対策医療用マスク】・・・・・・・・・・JIS T 9002、USA-42CFR part84など
(DS2、N95、サージカルN95など)
【防じんマスク】・・・・・・・・・・・・・・JIS T 8151、JIS T 8157、USA-42CFR part84、EN143など
(DS2、N95など) ろ材評価用、マスク用試験装置の紹介 (t-dylec.net)
【バリアフェイスマスク】・・・・・・・・・・ASTM F3502
(ウレタンマスクなど)
サージカルマスクとN95マスクの違い
用途別で用いられる試験粒子及び粒子計測器の例
マスクには様々な評価方法があります。
評価方法によって試験粒子(粒子サイズや濃度)が変わり、それに伴い使用可能な粒子計測器も変わります。
下記に一部の例を記します。
高性能マスクの性能評価装置
TSI社製 フィルター効率自動検出装置(AFT) Model:8130A
●N95等の高性能マスク評価試験装置として使用されています
(米国 NIOSH 規格:42CFR part84)
※NIOSH認証を受けたマスクだけがN95マスクと名乗れます
●防じんマスクの国家検定機として使用されています
(日本 労働安全衛生法 規格:JIS T 8151)
※国家検定に合格したマスクだけが防じんマスクと名乗れます
検定機関:(公社)産業安全技術協会
●感染対策医療用マスクの評価機として活用可能です
(日本 規格:JIS T 9002)
※JIS認証制度はこれから始まる予定
●バリアフェイスマスクの評価機として活用可能です
(米国 規格:ASTM F3502)
米国NIOSHのマスク試験風景
NIOSHのマスク試験動画が公開されています。
TSI社製のフィルター効率自動検出機(AFT)Model:8130を用いている動画となります。
※8130Aは8130の後継機となり、現在販売されているモデルとなります。
What it Means to be NIOSH-Approved: A look into N95 Certification Testing – YouTube
8130Aの特徴
●粒子検出部
マスクの上流/下流それぞれにあるフォトメータで
同時に粒子濃度を計測します
捕集効率99.9999%(透過率0.0001%)まで対応します
●粒子発生部
アトマイザ圧力で粒子サイズをコントロール
粒子中和器はNaCl粒子における帯電影響を低減します
●ろ材の評価も可能
不織布やナノファイバーフィルター等、ろ材の
捕集効率測定も可能です
8130Aの動画
High resolutionYour Next Solution to Filter Testing(YouTube)
マスク評価装置(粒子捕集効率試験)
PALAS社製 マスク・フィルタ効率試験装置
Model:PMFT-1000
● 100 nm~40 μmの計測が可能です
● ろ材の評価も可能です
● NaCl粒子の他、オイル粒子での試験も可能です
● 42CFR part84へ対応する為のアップグレードキットも用意しています
マスク評価装置(BFE試験)
CH TECHNOLOGIES社製 BFE試験装置
● 米国食品医薬品局(FDA) ASTM2101に準拠しています
● マスクの細菌ろ過効率を定量的に評価可能です
(最大99.9%)
● 医療用マスク及び一般用マスクの性能試験に活用可能です
(JIS T 9001)
粒子計測器の紹介
マスクの捕集効率試験に用いられている粒子計測器には、主にフォトメーター、パーティクルカウンター(OPC)、アンダーセンカスケードインパクター(ACI)といった装置があります。これら装置を用いて簡易試験をする事も可能です。
フォトメータTSI社製:8587A
捕集効率 99.999%まで対応します
簡単に上流/下流/パージの切替が可能です
NIOSHのCBRN呼吸マスク認証試験に使用されました
米国陸軍のガスマスク開発に使用されました
パーティクルカウンタ
TSI社製:9110
粒径別の個数濃度計測が可能です
TSI社製:9110 粒径範囲:0.1~10 μm
8粒径を同時測定
サージカルマスク、HEPAフィルタ等の評価で使用されています
カスケードインパクタ 東京ダイレック製
AV-100
微生物粒子を培養皿に捕集します
0.65~7 μmを6段階に分級します
回収後、コロニー数を計数します
粒子発生器の紹介
マスクの捕集効率試験に用いられる試験粒子には、NaCl粒子、オイル粒子、PSL粒子、黄色ブドウ球菌などがあります。粒子発生器は、これらの粒子を安定的に発生し、マスク性能試験をお手伝いします。下記は一例となります。
エアロゾルアトマイザー TSI社製:3079A
小型コンプレッサー内蔵モデル
発生粒子径:Max 1 μm
発生流量:Max 5 L/min
発生可能粒子:NaCl、オイル、PSLなど
6-JETアトマイザー TSI社製:9306
大量発生が可能です
発生可能濃度:<1×106 個/cm3
発生流量:6.5~72 L/min
発生可能粒子:NaCl、オイル、PSLなど
ブロースタインアトマイザー
CH TECHNOLOGIES社製
細菌やウイルスの発生が可能です
多彩なモデルラインナップ(1JET~8JET)
シリンジポンプを使って発生粒子の供給が可能です
フィルター性能比較試験
市販マスクやその他の素材をフィルターとして利用した場合の性能比較試験の結果を右表に記します。
試験方法:N95マスク、DS2マスクの試験方法
試験装置:8130A
試験粒子:NaCl粒子
試験流量:85L/min
参考情報 粒子種類、粒子計測器種類、フィルタ種類の例
参考情報 アメリカ コロラド州立大学のN95マスクの研究
発生器にCH TECHNOLOGIES社製コリゾンネブライザー捕集効率の計測にTSI社製 SMPS3938、DustTrakⅡ8530を使用
参考情報 アメリカ ワシントン大学 N95マスクの研究
発生器にCH TECHNOLOGIES社製コリゾンネブライザー捕集効率の計測にTSI社製 SMPS3938を使用
医療用マスクの評価装置は東京ダイレックにご相談ください
※本資料はこちらをクリックしていただくとダウンロードできます。
TEL: 03-5367-0891 mail: info@tokyo-dylec.co.jp