はじめに
マスクやフィルタには用途、目的によって様々な評価方法があり、世界標準の規格(ISO)や各国独自の規格が定められています。(JIS、GBなど)
例:ISO16890に準拠した試験設備
このような試験設備を用意する事で規格に準拠した試験が可能となりますが、コストやスペース(試験設備が大型)等の点から導入が困難な場合もあります。
コスト、スペースを抑えた研究の進め方として、ダクト等の試験ラインを小型・簡易な物とし、計測装置を目的に応じて選択して試験・評価を行うという方法もあります。
本資料では、簡易的な試験例や、目的別の性能評価に適した計測関連機器を紹介致します。
マスク・フィルターの用途と規格の例
【高性能マスク(防じんマスク、N95マスク)】
JIS T 9002、JIS T 8151、JIS T 8157、USA-42CFR part84など
→参考資料:医療用マスクの評価装置の紹介
【サージカルマスク】
ASTM F2100-11など
→参考資料:異なるマスクの性能比較試験
【高性能(HEPA/ULPA)フィルタ】
IS029463、EN1822など
→参考資料:高性能フィルタ捕集効率試験装置の紹介
【一般換気用フィルタ】
JIS B9908:2019、ISO16890、ASHRAE52.2など
→参考資料:一般換気用フィルター試験 計測機器の紹介
【車用キャビンフィルタ】
ISO/TS11155、DIN71460など
→参考資料:キャビンフィルタ用捕集効率試験装置 CIF3000
【車用エアクリーナー用フィルタ】
ISO5011など
→参考資料:フィルタテスター MFP3000
【高圧エアー用フィルタ】
ISO12500など
→参考資料:高圧エアー用フィルタ試験に用いる計測機器の紹介
簡易的な試験例①(大気中の粒子を用いた試験)
【メリット】
・大型設備に比べコストが安い
・小スペースで試験が可能
・簡易的に評価が可能
・予算に合わせた装置を選定可能
・計測器 を変える事で目的(フィルタ種類)に応じた試験が可能
【デメリット】
・試験が安定しない(大気中の粒子が不安定)
・規格に準拠していない
・データのまとめに手間がかかる(専用ソフトが無い)
簡易的な試験例②(粒子発生器を用いた試験)
【メリット】
・大型設備に比べコストが安い
・小スペースで試験が可能
・簡易的に評価が可能
・予算に合わせた装置を選定可能
・安定した試験が可能
・計測器 、発生器 を変える事で目的(フィルタ種類)に応じた試験が可能
【デメリット】
・規格に準拠していない
・データのまとめに手間がかかる
(専用ソフトが無い)
・試験例①よりはコストが高くなる
用途別で用いられる試験粒子及び粒子計測器の例
マスクやフィルターには様々な評価方法があります。
評価方法によって試験粒子(粒子サイズや濃度)が変わり、それに伴い使用可能な粒子計測器も変わります。
下記に一部の例を記します。
粒子計測器の種類と違い
マスクやフィルターの捕集効率試験に用いられている粒子計測器には、主にフォトメーター、パーティクルカウンター(OPC)、凝縮粒子カウンター(CPC)といった装置があります。これらは全て光散乱式の粒子計測器ですが、下記のように特徴が異なります。
【フォトメーター】
粒子の質量濃度を測定(mg/m3など)
粒子サイズは不明
0.1 μm~20 μm程度まで測定可能(装置により異なる)
高濃度まで測定可能
【パーティクルカウンター(OPC)】
粒子の個数濃度を測定(個/m3など) (OPC)
粒子サイズも同時に測定 0.1~20 μm程度まで測定可能(装置により異なる)
主に清浄空間の測定に用いられる(高濃度は苦手)
【凝縮粒子カウンター(CPC)】
粒子の個数濃度を測定(個/cm3など)
粒子サイズは不明(分級器と組合わせれば測定可能)
数nm~3 μm程度まで測定可能(装置により異なる)
高濃度まで測定可能
粒子発生器の使用によって
マスクやフィルタの捕集効率試験を簡易的に行うには、大気中の粒子を利用する方法もありますが、大気中の粒子濃度は日によって変わる為安定した性能評価を行う事が難しい面があります。
粒子発生器を使用する事によって、安定した捕集効率試験を行う事が可能になります。
例:粒子発生器の安定性確認
発生器:TSI社製アトマイザー Model:3079
発生粒子:NaCl 測定機:TSI社製 SMPS
粒子発生器を使用する事によって、目的(フィルタ種類)別の規格で定められた試験粒子で試験を行う事も可能となります。
また、下図のように発生試料によって様々な分布の粒子を発生する事が出来る為、マスク、フィルタの研究開発に大きく役立ちます。
TSI社製フィルター試験装置 Model:3160
オイルやNaCl等を発生させる際、溶液濃度によって発生する粒子のサイズが変わります。
溶液濃度を調整する事で、試験粒子サイズを変える事が可能となります。
左グラフは3種類の異なる溶液濃度で発生させた粒子の粒径分布例になります。
TSI社製フィルター試験装置 Model:3160
粒子計測器の紹介 マスク用、PM2.5対応フィルタ用など
TSI社製 レーザーフォトメーター Model:8587A
・捕集効率 99.999%まで対応
・簡単に上流/下流/パージの切替が可能
・濃度範囲:1.0 μg/m3~200 mg/m3以上
・NIOSHのCBRN呼吸マスク認証試験に使用
・米国陸軍のガスマスク開発に使用
TSI社製 エアロゾロモニター DustTrakⅡ Model:8530/8532
・質量濃度の測定が可能
・粒径範囲:0.1~10 μm
・高濃度に対応(Max. 400 mg/m3)
・小型軽量、高い操作性
・マスク、PM2.5用フィルタ、空気清浄機評価等で使用
インパクタ交換で簡単にPM1、PM2.5、PM4、PM10の切替が可能
粒子計測器の紹介 マスク用、HEPA/ULPAフィルタ用など
TSI社製 ポータブルパーティクルカウンター AeroTrak
Model:9110
・粒径別の個数濃度の測定が可能
・粒径範囲:0.1~10 μm
・8粒径を同時測定
・サージカルマスク、HEPA/ULPAフィルタ等の評価で使用
・より手軽なハンディタイプもラインアップ
※ハンディタイプは0.3 μm~
TSI社製 高感度エアロゾルスペクトロメーター(LAS)
Model:3340A
・粒径別の個数濃度(粒径分布)の測定が可能
・粒径範囲:90 nm~7.5 μm
・サンプル流量を可変可能(10~90 cc/min)
・HEPA/ULPAフィルタ、その他フィルタ等の評価で使用
・空気清浄機の性能評価で使用
粒子計測器の紹介 HEPA/ULPA、半導体用ガスフィルタなど
TSI社製 走査式モビリティパーティクルサイザー
Model:3938シリーズ
・静電分級器(DMA)と凝縮粒子カウンター(CPC)を
組合わせる事で粒径別の個数濃度(粒径分布)の測定が可能
・粒径範囲:1~1000 nm ※モデルにより異なる
・HEPA/ULPA、浄水用、半導体用ガスフィルタ等の評価で使用
・ナノ粒子の粒径分布計測装置として世界的に標準装置
・本装置を用いた一体型の試験装置もあり(Model:3160)
TSI社製 凝縮粒子カウンター(CPC)シリーズ
・リアルタイムに粒子個数濃度を検出
・粒径範囲:1~3000 nm ※モデルにより異なる
・HEPA/ULPA、浄水用、半導体用ガスフィルタ等の評価で使用
・ナノ粒子の個数計測装置として世界的に標準装置
・より手軽なハンディタイプもラインアップ
粒子計測器 の紹介 一般換気用、キャビン用、高温用、高圧用など
TSI社製 オプティカルパーティクルサイザー(OPS)
Model:3330
・粒径別の個数濃度(粒径分布)の測定が可能
・粒径範囲:0.3~10 μm
・一般換気用フィルタ、その他フィルタ評価等で使用
・空気清浄機の性能評価で使用
・小型軽量、高い操作性
・オプション品も多数あり
PALAS社製 エアロゾルスペクトロメーター Welas Promo
・粒径別の個数濃度(粒径分布)の測定が可能
・粒径範囲:0.2~40 μm
・高濃度対応モデルあり(Max. 1,000,000 個/cm3)
・一般換気用フィルタ、キャビン用フィルタ、高圧フィルタ
エアークリーナー用フィルタ、耐熱フィルタ等の評価で使用
・オプション品も多数あり
粒子発生器の紹介 オイル、ソルト発生用
TSI社製 エアロゾルアトマイザー
Model:3079A
・小型コンプレッサー内蔵
・発生粒子径:Max 1 μm
・発生流量:Max 5 L/min
・発生可能粒子:オイル(PAO、DEHS、DOPなど)、PSL、NaClなど
TSI社製 6-JETエアロゾルアトマイザー
Model:9306
・大量発生が可能
・発生粒子濃度:<1×106 個/cm3>
・発生可能粒子:オイル(PAO、DEHS、DOPなど)
PSL(4 μmまで)、NaClなど
・発生流量:6.5~72 L/min
・別途エアー源が必要(ドライクリーンエアー)
・1-JETタイプもあり
粒子発生器の紹介 オイル、ソルト発生用
PALAS社製 エアロゾルジェネレーター PLGシリーズ
・発生可能粒子:オイル(PAO、DEHS、DOPなど)
NaClなど
・発生方式:ラスキンノズル
・発生流量:10~110 L/min ※
・発生オイルを加熱する事が可能(最大120℃)※
※モデルにより異なる
・別途エアー源が必要(ドライクリーンエアー)
CH TECHNOLOGIES社製 コリゾンネブライザー
・発生可能粒子:オイル(PAO、DEHS、DOPなど)
・発生流量:4~50 L/min
ジェット数を可変し発生量を制御
・垂直または水平方向の粒子発生
・別途エアー源が必要(ドライクリーンエアー)
粒子発生器の紹介 単分散粒子、試験粉体(ダスト)発生用
TSI社製 凝縮粒子発生器
Model:3475
・単分散粒子の発生が可能
・発生粒子径:0.1~8 μmで制御可能
・キャリアガスには窒素を使用
・高濃度(1×106 個/cm3以上)発生可能
PALAS社製 エアロゾルジェネレーター RBGシリーズ
・ISOダスト、JIS試験用粉体の発生が可能
・発生方式:ロータリーブラシ式
・発生粒子径:0.1~100 μm(粉体による)
・別途エアー源が必要(ドライクリーンエアー)
・耐圧モデル、窒素ガスモデル(キャリアガス)
大容量モデルなどもラインアップ
その他 関連機器の紹介 エアロゾル中和器
TSI社製 軟X線中和器
Model:3088
・帯電方式:軟X線による両極拡散荷電
・性能:9.5 keV、150 µA
・使用流量:0.3~5 L/min
・使用温度、圧力:常温、常圧
・インターロックスイッチを有した可搬型の中和器
PALAS社製 エアロゾル中和器
Model:CD-2000
・個体、液体どちらのエアロゾルにも対応
・放射線源を含まずにエアロゾルを中和
・陽イオンと陰イオンの両極性方式
・別途エアー源が必要(ドライクリーンエアー)
TSI社製 ディフュージョンドライヤー
Model:3062
・発生した粒子の水蒸気を乾燥・除去
・粒子ロスを最小限に抑える設計
・出口での湿度 RH20%(入口がRH60%の場合)
TSI社製 静電分級器
Model:3082シリーズ
・発生した粒子を分級、単分散化
・粒径範囲(分級器として)
Long DMA(3081A):8~1150 nm
Nano DMA(3085A):1.5~150 nm
・粒径範囲(SMPSとして)
Long DMA(3081A):10~1000 nm
Nano DMA(3085A):2~150 nm
・軟X線中和器使用
参考 試験フロー例 ①
ナノ粒子を用いたフィルタ効率試験の測定例
【概要】
①発生器で粒子を発生
②粒子を測定を行いたいサイズに分級
③粒子数の安定
④粒子の個数計測
参考 試験フロー例 ②
サブミクロン~ミクロンオーダーのフィルタ効率試験の測定例
【概要】
①発生器で粒子を発生
②中和、乾燥など(必要に応じて)
③粒子数の安定
④粒子の粒径分布の測定
参考 試験フロー例 ③
フィルタの漏れ試験の例(粒子透過の有無のみ確認必要)
【概要】
①発生器で粒子を発生
②中和、乾燥など(必要に応じて)
③粒子数の安定
④粒子の個数計測
参考情報 粒子種類、粒子計測器種類、フィルタ種類の例
参考情報 アメリカ コロラド州立大学のN95マスクの研究
参考情報 アメリカ ワシントン大学 N95マスクの研究
発生器にCH TECHNOLOGIES社製コリゾンネブライザー捕集効率の計測にTSI社製 SMPS3938を使用
マスク・フィルターの簡易的な評価装置は東京ダイレックにご相談ください。
※本資料はこちらをクリックするとダウンロードできます。
TEL: 03-5367-0891 Mail: info@tokyo-dylec.co.jp