吸入剤とは
吸入剤とは有効成分を液体又は固体の浮遊微粒子(エアゾール)として吸入し、気管支又は肺に適用する製剤です。呼吸器疾患に対しては、吸入剤は経口投与に比較して幾つかの利点があります。
•標的となる気管及び肺に直接作用するため、より少ない用量で効果が得られる
•全身曝露を回避できることから副作用の軽減を期待できる
吸入剤の種類としては、
•吸入粉末剤(粉末を吸入)
•吸入液剤(液体を霧化して吸入)
•吸入エアゾール剤(有効成分を噴射して吸引)
吸入剤の粒子粒径
代表的な気中粒子計測器の評価径
※幾何学径以外の評価は、真球と仮定した評価径となります。
空気動力学径とは
対象の粒子と終末沈降速度が等しい密度1 g/cm3の球の直径は、空気動力学径と呼ばれ、粒子の大きさとして代用されます。つまり、空気動力学径とは対象とする粒子と空気中で同じ挙動を示す仮想的な水滴の直径です。粒子の人体肺への沈着は、粒子の見た目のサイズではなく、比重も加味した重量が大きな要因になります。吸入剤の研究では、空気動力学径の測定が重要です。
弊社取扱製品
・APS3321 (TSI社)
・AN-200 (東京ダイレック)
日本薬局方
日本薬局方は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第41条により、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。日本薬局方の構成は通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条からなり、収載医薬品については我が国で繁用されている医薬品が中心となっています。
日本薬局方は100年有余の歴史があり、初版は明治19年6月に公布され、今日に至るまで医薬品の開発、試験技術の向上に伴って改訂が重ねられ、現在では、第十八改正日本薬局方が公示されています1)。
日本薬局方の第6章 6.15に吸入剤の空気力学的粒度測定法が記載されています。この測定法は吸入剤から生成するエアゾールの微粒子特性を評価するもので、いずれかの装置又は測定手順に従って、①有効成分の5 μm以下の微粒子量 (Fine Particle Dose FPD) を求める、②必要かつ,適切であれば (例えば対数正規分布に従うときなど)、カットオフ径に対する有効成分量の積算割合から空気力学的質量中位径(MMAD)や幾何標準偏差を求める必要があります。
1) 日本薬局方, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/AA10K-0000066530.html, accessed on Mar 13, 2023
吸入剤の空気力学的粒度測定法の世界規制の比較
EP: 欧州薬局方 ACI: アンダーセンカスケードインパクター MDI: 吸入エアゾール剤
USP: 米国薬局方 NGI:ネクストジェネレーションインパクター DPI: 吸入粉末剤
JP: 日本薬局方 MSLI:マルチステージリキッドインピンジャー
アンダーセンカスケードインパクター ( ACI )
人体への吸入粒子径評価に使用される
アンダーセンノンバーブルサンプラー AN-200
~空気動力学径を利用したスタンダード~
仕 様
粒径範囲:0.43~11 µm
粒径分類:8段階
吸引流量:28.3 L/min
※60 L/min、90 L/min仕様はご相談ください。
多段式のフィルターサンプラーであり、カスケードインパクター原理により、粒径別にフィルターに捕集が行え、秤量することにより評価ができます
~物品・パーツの交換はお気軽にお問い合わせください~
高分解で粒径分布(空気動力学的径)をリアルタイム測定
エアロゾルスペクトロメーター(Model APS3321)
仕 様
評価径の種類:空気動力学径
可測粒径範囲:0.5 ~ 20 μm
検出時間:1 秒 ~
分解能:トータル52チャンネル
濃度範囲:0.001 ~ 103 個/cm3
サンプル流量:5 L/min
検出部:1 L/min
シース流量: 4 L/min
サンプル時間:1 秒~18 時間/サンプル
環境温度:10 ℃~40 ℃
寸法:180 × 300 × 380 mm
重量:10 kg
電源:100 ~ 240 VAC、 50~60 Hz、
100 Wまたは24 VDC
APSスペクトロメーター3321 原理
モデルAPS 3321は、右記フロー図に示されるように、サンプルラインの内側に先端が極めて細い特殊ノズルを用いており、サンプル粒子がこのノズルを通過することで加速されます。
ノズルで加速された粒子は、次に検出部に運ばれ、2本のレーザーを通過します。この2本のレーザー間を通過するスピードは粒径に依存しますので、個々の粒子の通過時間(Time-Of-Flight)を計測することで、空気動力学径が分かります。例えば粒径が大きい程、慣性力が大きくなる為通過時間が長くなります。
1個の粒子が2本のレーザーを通過すると、右図のように2つの連続したピークのシグナルを出します。このピークとピークの時間(Time-Of-Flight)は、高い時間分解能(4 nano-sec)で検出されます。
APSスペクトロメーター3321と組み合わせて使用する希釈器
エアロゾル希釈器 (Model 3302A)
仕 様
粒径範囲:0.5 ~ 20 μm
希釈倍率:20 : 1 もしくは 100 : 1
粒子透過率:> 93%
流量:5 L/min
差圧(トータル):約1.2 cm H2O
希釈器は連結可能、
1台の連結で最大100,000個/cm3
2台の連結で最大10,000,000個/cm3
原理
一緒に接続されたAPS3321により流量5LPMのサンプルが吸引されます。希釈器内部に入ると、サンプルは二つに分岐され、一つのフローはそのまま下方向に、そしてもう一方はフィルターを通り粒子が除去されたクリーンエアーとなります。この後、この二つのフローは再び合流し混合します。
スペクトロメーターAPS 3321と組み合わせて使用するインパクター
APS3321用インパクターインレット (Model 3306)
仕 様
50%カット径:2.5 μm / 4.7 μm(空気動力学径)※
粒子ロス率:< 3%
捕集フィルター:47 mmガラス繊維フィルタ
流量
インレット流量:28.3 LPM
捕集フィルター流量:28.24 LPM
APSサンプル流量:0.062 LPM
APSメークアップ流量:4.94 LPM
APS希釈倍率:80:1
寸法(LWH):305 × 368 × 394 mm
重量:7.0 kg
※他のカット径にも対応できますので、ご相談ください。
薬局方に沿うDPI測定のセットアップのご提案
ASP3321とアンダーセンカスケードインパクターの測定結果比較
1) Alouache A.I., Kellaway I.W., Taylor K. M.G., Rogueda P. 2006, “ Effect of fluoroalcohol on product performance in PEG-Phospholipid containing pressurized metered dose inhalers,” Poster presentation at Drug Delivery to Lungs (DDL-17) conference, Edinurgh, Scotland
ASP3321とアンダーセンカスケードインパクターの性能比較
1) Jolyon M. 2014, “ime-of-Flight Methods for the Measurement of the Aerodynamic Particle Size Distribution of Aerosols from Orally Inhaled Products: Points to Consider,” Conference Paper in Journal of Aerosol Medicine and Pulmonary Drug Delivery · December 2014
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